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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《不連続殺人事件(ふれんぞくさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 頁

青空文庫

そこから裏門へ廻るつもりで坂道を降りてくると、裏門の前でバッタリ一馬に出会った。彼は禅寺前の間道の方からやってきた。

「やア、君か。今じぶん、おそいじゃないか」

一馬はビックリして、言葉をかけた。

「鉱泉宿へカルモチンを買いに行ってきたからさ。戦争中、売れ残っていたのを見かけたのだが、あいにく、お由良婆さまに先手をやられたあとさ」

「なるほど、そうか。あの鉱泉宿の残品も、近ごろはかなり知れてしまったからな。手紙で言ってくれれば買っておいてあげたのに。僕は草林寺へ妹の葬儀のことで話しに行ったのに、いくら待っても誰ひとりいない。本堂に腰を下ろして、三十分もぼんやり物思いにふけって来た始末なのさ」

表門の方の坂から懐中電燈がポカポカ動いてきた。海老塚医師であった。私たちを認めるとビックリたちどまって、今晩は、と言ったが、

「王仁豪傑も一片の煙となりましたか」ときいた。

王仁ついに一片の煙となる。私の内に快とするところだけれども、同じことをこのビッコの医者の奴が言うと、私の腹の虫がおだやかではなくなる。要するに王仁だけでなく、私たち全体を茶化し皮肉るところがあるせいで、こいつが何か言うたびに、私はポカリとぶんなぐってやりたくなる。