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せそう
世相
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《世相(せそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 頁
焼跡に暫らく佇んで、やがて新世界の軍艦横丁を抜けて、公園南口から阿倍野橋の方へ広いコンクリートの坂道を登って行くと、阿倍野橋ホテルの向側の人道の隅に人だかりがしていた。広い道を横切って行き、人々の肩の間から覗くと、台の上に円を描いた紙を載せて、円は六つに区切り、それぞれ東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の六大都市が下手な字で書いてある。台のうしろでは二十五六の色の白い男が帽子を真深に被って、
「さア張ったり張ったり、十円張って五十円の戻し、針を見ている前で廻すんだから絶対インチキなしだ。度胸のある奴は張ってくれ。さア神戸があいた、神戸はないか」と呶鳴っている。
誰かがあいていた神戸の上へ十円載せると、呶鳴っていた男は俄かづくりのルーレットの針を廻す。針は京都で停る。紙の上の十円札は棒でかき寄せられ、京都へ張っていた男へ無造作に掴んだ五枚の十円札が渡される。
「――さアないか。インチキなしだ。大阪があいた。大阪があいた」
誰も大阪へ張る者がない。ふと張ってみようという気になった。ズボンのポケットから掴み出して大阪の上へ一枚載せた。針が動いた、東京だ。