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ふたおもてくらべぼたん
両面競牡丹
酒井 嘉七
線上閱讀酒井 嘉七《両面競牡丹(ふたおもてくらべぼたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,317 字 · 25 頁
ところが、御隠居さまは、家を離れるとすぐに、こんな事を申されたのでございます。
「旅をいたしている間、私がお師匠、とお呼びするのも、何んだか人の気を引き易くて、変でございますし、私も、御隠居さまと呼ばれますと、何だか改まりまして、保養をする気がいたしませぬ。でこういたしましょう。私は、あなたを、娘か何かの様に、お千代と呼ぶことにいたしましょう。師匠は、私を――お母さん、では、余り芝居がかる様でございますから、伯母さんと言って下さいませ。これでは不自然でなく、いいでございましょう」
と、かように申されたのでございます。汽船は、新しい『別府丸』でございました。中桟橋に着きますと、船は、もう横づけになっております。切符の用意はしてございましたので、私達はすぐ船に乗ったのでございます。ところが、船の入口で、御隠居さまは、お知り合いの方にお逢いになったのでございました。背広服を着た、いかめしい、お方で御座いました。御隠居さまは、丁寧に御挨拶をなさいました。私も、軽く会釈をいたしましたが、お話の邪魔をするのは失礼と存じまして、少し離れて立っておりました。男の方のお声は少しも聞きとれませんでしたが、御隠居さまの、