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ふたおもてくらべぼたん
両面競牡丹
酒井 嘉七
線上閱讀酒井 嘉七《両面競牡丹(ふたおもてくらべぼたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,317 字 · 25 頁
「あっ……」
と、声を上げたのでごさいます。私の目にうつりました人影、それこそ、誰の姿でもございません。私ではございませんか。――まくら雪洞の、蒼白い、にぶい光の中に、じっと坐ったまま消えいりそうな女の姿、顔から、あたま、着ている着物、島原模様に染め上げた、絞縮緬の振袖と、白く細い手くびに見える絵羽模様の長襦袢それに、絞塩瀬の丸帯から、大きく結んだしごきまで、何からなにまで、わたくしに相違はございません。御隠居さまは、それが、ほんとの私とお考えになって話していられたのでございましょう。背を、つめたいものがさっと流れました。身体が、がたがたと、顫えて参りまして、後から、大きな、まっくろな手が、私に襲いかかったように感じました。と、そのまま、私は、深い、ふかい谷底へ気がとおくなってしまったのでございました。
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あれから、もう、まる一年、分限者の御隠居さまとは、表かんばん、よからぬ生業で、その日その日をお暮しになっていたとは言いながらも、私には親身のように、おつくし下さった御隠居さま、それに、あの、私と生き写しのお千代さま、いま頃は、どこでどうしていられますことやら。