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しょうひんよっつ

中勘助随筆集

中 勘助

線上閱讀中 勘助《中勘助随筆集(しょうひんよっつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,694 字 · 32 頁

青空文庫

それとひとこまおいてつづきの荒波のなかを分厚な唇をもったつわものが鬚を水に靡かせながら泳いでるのはアッシリアの彫刻にでもありそうな図だ。そのむこうには首をのばして疾走する馬の頭、次の間との境の欄間のところには平家蟹みたいな面が二つ、平家蟹より品がなくて妖気を帯びてるのは蜘蛛の精でもあろうか。そのほか雁の横顔や、古生物の化石や。

寝つきがわるいでもなく、眠られないでもないにかかわらず寝るのがつまらなくて 夜がなければ、はやく朝になってくれれば と念じつつ目をとじる。その待ちこがれた朝がくれば雨戸があけられ、蚊帳がはずされて若く輝かしい「きょう」の笑顔が私を見舞う。頭のほうは見るのに苦しいので問題にならない。足のほう、北の二重のガラス障子を△△さんがあけてくれると写真機のシャッターが開かれるように四角にくぎられた外景が現れ、冷たい空気が液体みたいな輪郭をもって流れこんでくる。それが衰弱と睡眠のためにけだるく弛緩した神経を溌剌と生気づける。四角のなかには椎の木と塀外の街路樹、その枝葉のあいだからちらほらと空がみえて、時には雀の声がきこえる。ただそれしきのものがこよなく美しく目ざましい。