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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

線上閱讀林 不忘《丹下左膳(たんげさぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 頁

青空文庫

「なんだい一体! おもしろくもない愁嘆場だよ。また泣きだしゃがった!」

われ知らず口にのぼしてつぶやいた拍子に!

雨音を乱して近づく多人数の人の気!

はっとして露地の入口に向けたお藤の眼に、ほの光る銀糸の玉すだれをとおして映ったのは、いつのまにどこから湧いたか、真っ黒ぐろに折り重なった捕手の山! 十手の林! しいんと枚をふくんで。

おやッ! と胆を消しながらもそこは櫛まきの大姐御、にっと闇黒に歯を見せてすばやく左右の屋根を仰ぐと、どっこい! 人狩りの網に洩れ目はなく、御用の二字を筆太に読ませた提灯が、黄っぽい光を雨ににじませて、そこにもここにも高く低く……。

ふくろ小路だ。にげみちはない。

と、とっさに看取した櫛まきお藤、おちょぼ口を袖でおさえると、ひとりでに嬌態をつくった。

「あれさ、野暮ったいじゃないか、いやに早い手まわしだねえ!」

一手所望だ……という男の声は、算をみだした闘場において、確かなひびきをもって栄三郎の耳をうった。

鼻と鼻がくッつきそう――闇黒をのぞくまでもなく、相手は、ふり注ぐ雨に全身しぼるほど濡れたりっぱな武士!

鈴川源十郎の化物屋敷には、まだ雨中剣刃の浪がさかまいているのだ。