輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
かんぱい
乾杯
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《乾杯(かんぱい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,788 字 · 18 頁
この頬の赤みは、いつも、何かの決意のしるしでした。
山川正太郎はそれをも見て取りました。
「一杯のみませんか。」
差し出されたグラスへ、彼女は軽く頭を振りました。
「いいえ、あたくしは……。」
山川正太郎は一人でぐっと飲みほして、彼女の顔を改めて眺めました。
近々に見ますと、その額の、時々寄りあう眉の右上に、厚化粧では隠れそうに思われるほどの淡さで、拇指の先ほどの大きさの痣がありました。
――ああ、この痣だ。
まったく、それが機縁でありました。
だが、どうしてそうなったのか、明瞭でありません。重大な行動の動機が不分明に終ることは、案外に多いものです。山川正太郎自身、あの時のことを追想しても、すべてがぼんやりしていて、ただ、痣の一事だけが中心にはっきりしています。
彼は酔っていました。友人の旅先での訃報を受けていました。つまらぬことで女中を怒鳴りつけました。ちょっと父と議論しました。いくらか感傷的になっていました。その他、それらのすべてのことも、別に取り挙げるほどのものでないのは、勿論でありましょう。
そしてその晩、彼は書斎で、東京都の地図を拡げて、町名を辿りながら、空襲による罹災地域を見調べていました。