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しつらくえんさつじんじけん
二十世紀鉄仮面
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《二十世紀鉄仮面(しつらくえんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,489 字 · 77 頁
肋骨の肉が落ち窪み、四肢が透明な琥珀色に痩せ枯れた白痴の佳人は、直径二尺に余る太鼓腹を抱えて、今にもそれが、ぴくぴく脈打ち出しそうだった。
然し法水は、それに一瞥を呉れたのみで、すぐ死蝋と窓との間にある、卓子の側に歩んで行った。
幹枝の腹から出た腹水と、膜嚢を容れた大きな硝子盤が、その上に載っていて、褐色をした濁った液体の中に、二十余り鼈の卵みたいに、ブヨブヨしたものが浮いていた。そして、異臭も腐敗した腹水から、発していることが判った。
其処で、杏丸を顧みて法水がいった。
「この腐敗瓦斯には、硫化水素の匂いが強いじゃありませんか。硝子盤の下の布も、淡緑色に変色していますぜ。多分犯人は、これから純粋の瓦斯を採取して、それを膜嚢に充したもので、博士を殺した、とでもたしか思わせたかったのでしょう。けれども、生憎硫化水素は、患者の毒気といわれるほどで、到る処に痕跡を残して行くのです。それに、仮令純粋のものでも、昨夜のような、猛烈な濃霧に遇っちゃたまりませんよ。散逸する以前に、何より水蒸気が、吸収してしまいますからね。さてこれから、鹿子の目撃談を解剖しますかな」