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はたちのエチュード

二十歳のエチュード

原口 統三

線上閱讀原口 統三《二十歳のエチュード(はたちのエチュード)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 頁

青空文庫

*29

僕の育った植民地の街では、子供たちは祖国の姿を、両親の顔の中にみつける。

*30

わが母。――忍従と諦めの瞳の奥に、寂しい微笑の影を宿した、典型的な封建時代の婦人。お母さんの亡霊が現われるのは、決まって僕が寝ている時だ。

*31

黒船襲来。――紅毛人は僕の故郷の浜べをも脅かしたか。

ああ、この眼が醒めてくれなかったら!

所詮は愚痴だ。泣き言だ。それに、考えて見れば僕もまた、海の彼方の異国を欲情する子供の一人ではなかったのか。洋行の夢は破れ、新しい都会は破壊された。

*32

失語症。――現在の脳の状態が進行すれば、僕は全く何も喋れなくなるに違いない。今の僕の語彙の貧弱なこと。

時おり、突っ拍子もない、すばらしい単語が浮かぶのに、次の瞬間には、自分にも何が何だかわからないのだ。

*33

絶えず自己を見つめる魂。かかる魂は存在しないし、人生においてはたえずわれわれは死滅し、再生しては変身してゆくものである。

ところが、自己を見失うことは僕には、「安慰」と「無知」との代名詞にすぎなかったし、僕の潔癖さはそれが汚らわしくてならなかったのだ。