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はたちのエチュード
二十歳のエチュード
原口 統三
線上閱讀原口 統三《二十歳のエチュード(はたちのエチュード)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 頁
僕はいつでも独りだっただけだ。
*192
人の好い老人たちは、僕を見てはらはらする。
「なんて軽はずみな子だろう。危くて見ちゃいられない。もういいかげんにわがままなお茶番はおよし」
放蕩無頼の悪党たちは、僕を鄭重に敬遠する。
「せっかくのお酒がまずくなっちまうよ。君は、肩を張りすぎてるんだもの。何だか面映ゆくってしょうがないや」
*193
ある程度、僕らは自分に持ち合わせのない弱点をさえ装わなければ社交界に出て行けない。
僕にはばかのまねも、白痴のまねも可能である。
眼の光さえ、今日では隠し偽ることができる。
つまり意識のある高みにおいては、真実とそっくり同じ仮面をかぶりうるということは、実証論者をして、次のように言わせるだろう。
「全く同じであれば、やはり同じわけだ。これを偽瞞とか、真実とか区別する必要はない。ばかの容貌はばかであることの証拠なのだ。――精神。ふん、亡霊さ」
*194
僕はランボオのあの、表現への容赦ない不信と、烈しい意欲とを含んだ、言葉を思い起こす。
――やがて、宇宙的言語の時代が来るであろう。それは、音・色・匂い、すべての陰影を要約して魂へと通ずるであろう、と。