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はたちのエチュード

二十歳のエチュード

原口 統三

線上閱讀原口 統三《二十歳のエチュード(はたちのエチュード)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 頁

青空文庫

僕の眼より冷ややかにならねばならぬ。

勝利の感情を受け入れてはならない。また、弱気の蛆が涌く。

*9

僕は身をもって弱気にぶつかった。僕の周囲には、昔ながらの家具と、壁と、窓掛けとが、「安心おし」とでもいうように静かに取り廻いていた。

壁を破壊することだった。そしてありとあらゆる学問に、思想に、人々に、まだ僕自身の影に、僕は「壁」の姿を見つけた。

僕に、慰安とは不具戴天の仇同士であった。

身についた汚穢は堪らなかった。僕はその生温いよごれた着物を一枚一枚と脱ぎ棄てながら歩いたのだ。しかもその足には怠惰という疥癬が一面に巣喰っていた。

*10

言葉で片づける、ということには常に許容と、自慰とがある。もっと謙虚になることだ。

*11

「お前は『救済』を唾棄すると言った。だが、そうやって、執着の鎖を断ちきって転身しつづける、そこにお前の『救済』と、『慰め』があるのじゃないか」

悪魔よ、黙ってろ。お前の汚れた手の指は、僕の身体に一本でも触れることはできないのだ。

「やはり救いはあるのですわ。そうやってただ独りで歩いて来たあなたに、今、残されたものが、あなたの清浄さであり、透明な無垢の肉体なのではありませんか」