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いぶせますじによせて
井伏鱒二によせて
小山 清
線上閱讀小山 清《井伏鱒二によせて(いぶせますじによせて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,419 字 · 11 頁
と井伏さんは太宰のことをいっている。この話はおもしろい。二人の生活の速度というようなものが、図らずも、この点滴の割合にあらわれているように思われる。井伏さんと太宰とでは、その理想とする点滴の緩急に、数にして二十五滴のひらきがある。そして二人は、それぞれの生活の速度の基本を、そんなところに置いていたようである。四十滴を理想としていた太宰は、井伏さんを置いてけぼりにして、駈け足でこの世からさよならしてしまった。無言の対立に、そんな仕方で結末をつけたというわけだろうか。この文章にあらわれている限りでは、井伏さんは単に二人の好みの水音のことを話しているだけで、思うに二人の生き方がこうであるなどとはいっていないのである。たとえ井伏さんがそれを意識しているとしても、それをあらわに語らないところに、井伏文学というものがあるのだろうから。この文章を読んで私がこんなことをいうのは、これは程度の低い批評家根性がさせるようなもので、こんなことを書くのは、くだらないのだ。まして私が二人の間にわり込んで、おれの生き方を水滴の数に換算すればこのぐらいだろうなどといったとしたら、なおなお下司なことになるだろう。