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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《人外魔境(じんがいまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,384 字 · 42 頁
どんな奴だ、さだめし肩をすぼめて悄んぼりと出てくるだろうと――多少酔いも手伝った折竹が、そのスーツケースを手にもって、いま現われるかと入口を見守っていたのだ。
まったく、こうして佇んだ数秒間さえなければ、かの怪奇の点では奥アマゾンを凌ぐといわれる、水棲人のすむあの秘境へはゆかなかったろうに。EsterosdePatino――すなわち「パチニョの荒湿地」といわれる魔所。
まもなく、その入口をいっぱいに塞いでしまいそうな、大男が悠然と現われた。舗道へ降りると、ちょっと足もとのあたりを一、二度見廻していたが、すぐ折竹に気がついたらしく、
「やあ大将、拾っといてくれたね」
「番をしてたよ。どうせ、出てけ――を喰わされるようじゃ、だいじな財産だろう。さあ、たしかにお渡ししたよ」
しかし、此奴がと思うとじつに意外な気持。猫のように摘みだされた失業芸人とは、およそ想像もされぬ態の人物。肩付きの逞しさは閂のよう、十分弾力を秘めたらしいひき締った手肢、身長、肉付き、均斉といい理想的ヘルメス型の、この男には男惚れさえしよう。
それに、服装をみればおそろしい古物――どこにもクラブ稼ぎの芸人といったようなところはない。