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じんせいのらくじ

人生の楽事

福沢 諭吉

線上閱讀福沢 諭吉《人生の楽事(じんせいのらくじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,300 字 · 7 頁

青空文庫

に達せざるも可なり、之が為めに金を費して全く無益に属するも可なり、その人の一生涯に成らざれば半途にして第二世に遺すも可なり、或はその人が病気の時に休息するは勿論、無病にても気分に進まざる時は業を中止すべし、勤るも怠るも都て勝手次第にして、俗に云えば学者を飼放し又飼殺しにすることなり。斯の如くすれば万事不取締にして迚も実効を奏することなしと思う者こそ多かるべけれども、元来学者の学を好むは酒客の酒に於けるが如くにして、傍より之を制すべからざるのみか、自から禁ずること能わざる所のものなれば、所謂飼放しはその勉強を促すの方便にして、俗界に喋々する規則取締等こそ真に学思を妨るの害物なりと知るべし。凡そこの辺の趣向にしたらば、日本の学者も始めて能くその本色を現わして辛苦勉励、心身の力を尽し、遂に造化の秘密を摘発して世界中の物理学に新面目を開くこともあるべし。試に実際の費用を概算するに、十名の学者に一年千二百円を給して共計一万二千円(この種の学者は世間に交際も少なく、衣食住の辺幅を張らんとするが如き俗念もなく、物外に独立して他を顧みざること恰も仙人の如き者なれば、一年の生計千二百円にて十分なるべし)。