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にんげんせいかつのむじゅん
人間生活の矛盾
丘 浅次郎
線上閱讀丘 浅次郎《人間生活の矛盾(にんげんせいかつのむじゅん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 頁
二千年前も千年前も、百年前も、今日もいつもその時が世の末であるというのはすなわち全部が下り坂であったからである。階級型の社会を造っている動物に社会本能と階級本能とが退化すれば、その生活に破綻の生ずるのは当然のことで、退化の度が進むにしたがい、破綻はますます顕著にならざるを得ない。社会本能が退化すれば、相互扶助の行動が減って、自己本位の行動が増し、階級本能が退化すれば下は上を敬わずいよいよ治め難くなって行く。その時に澆季という昔を今から振り返って見れば、今の澆季よりは人情風俗に、はるかに奥床しいところがある。憂しと見し世も後に恋しくなることは千年前も今日も変りはない。思想の悪化ということは、生活難などのために、近頃になっていちじるしく目立ち始めたかも知れぬが、実は何千年も前からすでに緒が開かれてあったのである。
本能の退化ということに心づかぬ人たちは、社会生活に何らかの破綻が現われるごとに、これを制度に不条理な点があるためと解釈し、その改革をはかった。もとより階級本能の盛んな頃に造られた制度は、この本能の退化につれて、おいおい時勢に適せぬものとなったから、これを適当に改正することは必要であったろうが、制度さえ改めたら、それで社会生活が完全に行なわれると考えるのは大間違いである。