輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《人間豹(にんげんひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 頁

青空文庫

まっ赤な厚い唇が、ヌメヌメと光り、白い歯のあいだから、例のけだもののドス黒い舌が、無気味に覗いていた。

それは窓の少ない薄暗い部屋であったから、彼の両眼の蛍火のような怪光をハッキリ見てとることができた。青く黄色く燃える眼底の妖火は、彼が激すれば激するほど、その光輝を増して行くように思われた。

その眼、その口、その四肢をもって、黒い人間豹は、今や彼の美しい餌食に飛びかかって行った。

二人のからだは、ただ見る黒白の鞠となって、広い土間をころがりまわった。黒い手と白い手とが、烈しくもつれ合った。弘子はけなげにも、叫び声さえ立てず、死にもの狂いの抵抗をつづけているのだ。

神谷は、そのもつれ合った二人の姿が、隙間の眼界から消えるごとに、心臓の鼓動も止まる思いがした。彼はわが身の危険も忘れて、幾度も、危く叫びだしそうになった。だが、この密室の中で叫んでみたところでなんの効果があろう。効果がないのみか、そんなまねをすれば、かえって事態を悪化させるばかりだ。彼は歯を喰いしばって、脂汗を流して、節穴にしがみついているほかはなかった。

怪人はまだ充分の力を出してはいなかった。