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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《仇討三態(あだうちさんたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,136 字 · 33 頁
が、少年時代に受けた武士としての教育が、それを許さなかった。彼は自分の武運の拙さが、しみじみ感ぜられた。それと同時に、自分の生涯をこれほど呪っている父の敵が、恨めしかった。彼は敵に対する憎悪を自分で奮い起しながら、またまた二年に近い間、畿内の諸国を探し回った。
浪華の倉屋敷で、国元の母が死去したという知らせを得たのは、彼が三十八の年である、故郷を出てから十六年目であった。
恐ろしい空虚が、彼の心を閉した。すべてが煙のように空しいことに思われた。千辛万苦のうちに過した十六年の旅が、ばかばかしかった。敵に対する憎悪も、武士の意地も、亡父への孝節も、すべてが白々しい夢のように消えてしまった。
彼は間もなく、浪華に近い曹洞の末寺に入って得度した。そこで、一年ばかりの月日を過してから、雲水の旅に出て、越の御山を志して来たのである。
瞋恚の念が、洗われた惟念の心には、枯淡な求の道の思いしか残っていなかった。長い長い敵討の旅の生活が、別人の生涯のようにさえ思われはじめた。
その日は、維那和尚から薪作務のお触れが出ていた。ほがらかな初夏の太陽が老杉を洩れて、しめっぽい青苔の道にも明るい日脚が射していた。