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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《仇討姉妹笠(かたきうちきょうだいがさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 頁

青空文庫

「それ向こうへ逃げたぞ!」

「斬られたのは近藤氏じゃ」

こんな声が聞こえてきた。そうして覚兵衛と勘兵衛とが、閉扉の館の方角をさして、走って行く足音が聞こえてきた。

「行ってみよう」と頼母は云って、榻から立ち上って歩き出した。

「それでは私も」と主馬之進も云って兄に続いて亭を出た。

亭には一人松女だけが残った。

松女は寂しそうに卓へ倚り、両の肘を卓の上へのせ、その上へ顔をうずめるようにし、何やら物思いに耽っていた。燃え尽きかけている蝋燭の燈が、白い細い頸の辺りへ、琥珀色の光を投げているのが、妙にこの女を佗しく見せた。

といつの間に現われたものか、その松女のすぐの背後に、妖怪のような女の姿が、朦朧として佇んでいた。

猿廻し姿のお葉であった。じっと松女を見詰めている。その様子が何となく松女を狙い、襲おうとでもしているような様子で……

と、不意にお葉の片手が上り、松女の肩を抑えたかと思うと、

「お母様!」と忍び音に云った。

松女はひどく驚いたらしく、顔を上げると、

「誰だえ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と訊いた。

「お母様、わたしでございます」

「お母様だって? このわたしを! まアまアまア失礼な! 見ればみすぼらしい猿廻しらしいが、夜ふけに無断にこんな所へ来て、わたしに向かってお母様などと! ……怪しいお人だ、人を呼ぼ