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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《仇討姉妹笠(かたきうちきょうだいがさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 頁

青空文庫

紐を手繰って腰へ挿み、藤八猿を肩にしたまま、お葉は田安家の土塀の内側の、植込の根元に身をかがめ、じっと四辺を見廻した。それにしてもお葉は何と思って、田安家のお庭へなど潜入したのであろう? 自分の加担者の腰元お八重へ、極重悪木という恐ろしい木の、植え込まれたことを告げ知らせ、その木へ決して触わらぬようにと、注意をしたいためからであった。

(お八重様の居り場所どこかしら?)

お葉は眼を四方へ配った。

三卿の筆頭であるところの、田安中納言家のお屋敷であった。客殿、本殿、脇本殿、離亭、厩舎、望楼台、そういう建物が厳しく、あるいは高くあるいは低く、木立の上に聳え木立の中に沈み、月光に光ったり陰影に暗まされたりして、宏大な地域を占領している。

(奥方様付きのお腰元ゆえ、大奥にお在でとは思うけれど、その大奥がどこにあるやら?)

といっていつ迄も植込の中などに、身を隠していることも出来なかったので、

(建物の方へ忍んで行ってみよう)

で、彼女は植込を出て、本殿らしい建物の方へ、物の陰を辿って歩いて行った。

この構内の一画に、泉水や築山や石橋などで、形成られている庭園があったが、その庭園の石橋の袂へ、忽然と一人の女が現われたのは、それから間もなくのことであった。