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あだうちきんしれい

仇討禁止令

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《仇討禁止令(あだうちきんしれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,238 字 · 35 頁

青空文庫

「おう!」吉川が斬り込んだが、老人はさっと身を屈めて、低い鴨居のある違い棚の方へ身を引いた。勢い込んで斬りつけた吉川の長刀が、その鴨居に斬り込んだので、あわてながら刀を抜こうとする隙を、老人は身を躍らして、吉川の左肩へ、薄手ながら一太刀見舞った。

さすがに、小太刀組打を主眼とする竹内流の上手である。

吉川が斬られたのを見て、幸田が素早く斬り込んだが、老人は床柱の陰に入って、それを小楯に取りながら、小太刀を片手正眼に構えている。

邸内が、ざわめき出した。手間取っては、大事である。主謀である小泉はあせった。

「天野氏! 天野氏!」彼は思わず新一郎の名を呼んでしまった。新一郎が、自分の名を呼ばれてはっと驚いた以上に、老人が驚いた。

「新一郎か、新一郎か!」老人は、狂気のように目を据えて、覆面の新一郎を睨んだ。

新一郎は、熱湯を呑む思いであった。

先刻からも、頼母の必死の形相に、見るに堪えない思いをしながら、際あらばと、太刀を構えていたのであるが、相手にそれと知られては、いよいよ思い乱れて、手練の太刀先さえ、かすかに震えてくるのであった。

「天野氏、拙者が代る!」