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あだうちきんしれい

仇討禁止令

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《仇討禁止令(あだうちきんしれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,238 字 · 35 頁

青空文庫

と、新一郎がきいた。

万之助は、しばらくの間、黙っていたが、

「それについては、改めてお兄様に、御相談したいと思います」と、いった。万之助の目が急に険しくなったような気がして、新一郎はひやりとした。

その日、姉弟は夕食の馳走になってから、いずれ三、四日のうちに来るといって、水道橋の松平邸内に在る蘆沢家へ帰って行った。

が、三日目の夕方、姉弟の代りに、伊織がひょっこり訪ねて来た。

珍客なので、丁重に座敷へ迎えると、盧沢伊織はいきなり、

「お八重殿が、とうとう辛抱しきれないで、東京へ出て来たではないか」

「……」新一郎は、なんとも返事ができなかった。

「貴公は、姉弟にいつからでも家へ来いといったそうだが、ただ家へ呼ぶなんて、生殺しにしないで、ちゃんと女房にしてやったらどうだ」

「はあ……」

「はあじゃ、いけない。はっきり返事をしてもらいたい。お八重殿も、もう二十三だというではないか。女は、年を取るのが早い。貴公はいくら法律をやっているからといって、人情を忘れたわけではあるまい。昨日も、ちょっとお殿様に申し上げたら、それは是非まとめてやれとの御意であった。昔なら、退引ならぬお声がかりの婚礼だぞ。