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こんにちのぶんがくとぶんがくしょう

今日の文学と文学賞

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《今日の文学と文学賞(こんにちのぶんがくとぶんがくしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,254 字 · 9 頁

青空文庫

欧州大戦と、この大戦では被害という程の経験をしなかった日本が、大戦に当って好景気時代にめぐり会い、社会経済に一段と膨脹を示したことは、直接にはジャーナリズムの規模の飛躍的な拡大となり、一方に円本時代を現出した。そして当時の既成作家の大部分が、円本の氾濫によって所謂金もちになり、多少の資産をもつようになり、溌剌たる創作力を次第に生暖い日本生活の懐の中で鈍らせ始めた。折から、好況後の経済恐慌によって世間は鋭く現実に目を醒されたと同時に、文学の領域に力強い波頭をもって大衆というものが登場しはじめた。勤労するこの社会の大多数者の芸術化の要望が湧き上って、過去の文学の形式、内容は、全く新しい光りの下に見直されはじめた。文学についての新しい見かた、人間の良心というものの現実生活に即しての新局面の展開が、文学の上に行われるようになった。有島武郎、芥川龍之介という二人の作家の死は、日本文学の成長を語るとき、見落すことの出来ない凄じい底潮の反映として考えられると思う。

それにひきつづく略十年間、一九三三年頃まで文学の主潮はプロレタリア文学にあり、日本の歴史のふくむ複雑な数多の原因によってこの潮流の方向が変えられると共に、文学は、その背景である社会一般の生活感情にあらわれた一種の混迷とともに画期的な沈滞と無気力に陥った。