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こんにちのぶんがくのてんぼう
今日の文学の展望
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁
或は当時に至るまでの大衆生活の歴史の一部として自己の過去を見直そうとする意欲も文学の欲望となって、中野重治氏「第一章」「村の家」、窪川稲子氏「鉄屑の中」「一包の駄菓子」、窪川鶴次郎氏「一メンバー」、橋本英吉氏「炭坑」、中條百合子「乳房」、立野信之氏の長篇「流れ」等が現れた。
当時の事情はこの一方諷刺文学、諷刺詩の欲求を生み、中野重治、壺井繁治、世田三郎、窪川鶴次郎その他諸氏によっていくつかの諷刺詩が発表された。『太鼓』は諷刺詩をのせて時代への太鼓として発刊された。
獄中生活者を描いて出場した島木健作氏はこの時代、農民組合の経験をめぐっての諸作に移って来ており、徳永直氏は『文学評論』に自伝的な「黎明期」を連載しつつ、他方に「彷徨える女の手紙」「女の産地」等の小説を発表し、両者の間に見られる様々の矛盾によって、プロレタリア文学者へのいくつかの警告となったのであった。
能動精神の提唱から派生した以上のような諸問題が、夥しい作家、評論家によって活溌に、然し堂々めぐりの形をもって論ぜられている一方、島崎藤村氏は七年に亙る労作「夜明け前」をこの年の秋に完成した。