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ふらんすぶんがくとぼく
仏蘭西文学と僕
線上閱讀芥川 竜之介《仏蘭西文学と僕(ふらんすぶんがくとぼく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,415 字 · 5 頁
その本は今でも持っているが、当時筋を引いたところは、ニシアスの言葉がいちばん多い。ニシアスというのは警句ばかり吐いているアレクサンドリアの高等遊民である。――これも僕が中学の五年生の時分だった。
高等学校へはいったのちは、語学も少し眼鼻がついたから、時々仏蘭西の小説も読んでみた。ただしその道の人が読むように、系統的に読んだのでもなんでもない。手当たりしだいどれでもござれに、ざっと眼を通したのである。その中でも覚えているのは、フロオベルに「聖アントワンの誘惑」という小説がある。あの本が何度とりかかっても、とうとうしまいまで読めなかった。もっともロオタス・ライブラリイという紫色の英訳本で見ると、むちゃくちゃに省略してあるから、ぞうさなくしまいまで読んでしまう。当時の僕は「聖アントワンの誘惑」も、ちゃんと心得ているような顔をしていたが、実はあの紫色の本のごやっかいになっていたのである。近ごろケエベル先生の小品集を読んでみたら、先生もあれと「サランボオ」とは退屈な本だと言っている。僕は大いにうれしかった。しかしあれに比べると、まだ「サランボオ」なぞのほうが、どのくらい僕にはおもしろいか知れない。