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せんにん

仙人

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《仙人(せんにん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,223 字 · 7 頁

青空文庫

そうして慇懃に二十年間、世話になった礼を述べました。

「ついては兼ね兼ね御約束の通り、今日は一つ私にも、不老不死になる仙人の術を教えて貰いたいと思いますが。」

権助にこう云われると、閉口したのは主人の医者です。何しろ一文も給金をやらずに、二十年間も使った後ですから、いまさら仙術は知らぬなぞとは、云えた義理ではありません。医者はそこで仕方なしに、

「仙人になる術を知っているのは、おれの女房の方だから、女房に教えて貰うが好い。」と、素っ気なく横を向いてしまいました。

しかし女房は平気なものです。

「では仙術を教えてやるから、その代りどんなむずかしい事でも、私の云う通りにするのだよ。さもないと仙人になれないばかりか、また向う二十年の間、御給金なしに奉公しないと、すぐに罰が当って死んでしまうからね。」

「はい。どんなむずかしい事でも、きっと仕遂げて御覧に入れます。」

権助はほくほく喜びながら、女房の云いつけを待っていました。

「それではあの庭の松に御登り。」

女房はこう云いつけました。もとより仙人になる術なぞは、知っているはずがありませんから、何でも権助に出来そうもない、むずかしい事を云いつけて、もしそれが出来ない時には、また向う二十年の間、ただで使おうと思ったのでしょう。