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さくぶつのひひょう

作物の批評

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《作物の批評(さくぶつのひひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,439 字 · 13 頁

青空文庫

今の評家はこの便宜を認めていない。認めても作っていない。ただ手当り次第にやる。述作に対すると思いついた事をいい加減に述べる。だから評し尽したのだか、まだ残っているのか当人にも判然しない。西洋も日本も同じ事である。

これらの条項を遺憾なく揃えるためには過去の文学を材料とせねばならぬ。過去の批評を一括してその変遷を知らねばならぬ。したがって上下数千年に渉って抽象的の工夫を費やさねばならぬ。右から見ている人と左から眺めている人との関係を同じ平面にあつめて比較せねばならぬ。昔しの人の述作した精神と、今の人の支配を受くる潮流とを地図のように指し示さねばならぬ。要するに一人の事業ではない。一日の事業でもない。

この条項を備えたる人にして始めて、この条項中に差等をつける事を考えてもよいと思う。人力も人を載せる。電車も人も載せる。両者を知ったものが始めて両者の利害長短を比較するの権利を享ける。中学の課目は数においてきまっている。時間の多少は一様ではない。必要の度の高い英語のごときは比較的多くの時間を占領している。批評の条項についても諸人の合意でこれらの高下を定める事ができるかも知れぬ。