輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ふしゅう
俘囚
海野 十三
線上閱讀海野 十三《俘囚(ふしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 頁
(誰だろう?)もうあたしは、立っているに堪えられなかった。――扉は、静かに開く。だんだん開いて、やがて其の向うから、人の姿が現れた。それは紛れもなく夫の姿だった。たしかに此の手で殺した筈の、あの夫の姿だった。幽霊だろうか、それとも本物だろうか。
あたしの喉から、自然に叫び声が飛び出した。――夫の姿は、無言の儘、静かにこっちへ進んでくる。よく見ると、右手には愛蔵の古ぼけたパイプを持ち、左手には手術器械の入った大きな鞄をぶら下げて……。あたしは、極度の恐怖に襲われた。ああ彼は、一体何をしようというのだろう?
夫は卓子の上へドサリと鞄を置いた。ピーンと錠をあけると、鞄が崩れて、ピカピカする手術器械が現れた。
「なッなにをするのです?」
「……」
夫はよく光る大きなメスを取り上げた。そしてジリジリと、あたしの身体に迫ってくるのだった。メスの尖端が、鼻の先に伸びてきた。
「アレーッ。誰か来て下さアい!」
「イッヒッヒッヒッ」
と、夫は始めて声を出した。気持がよくてたまらないという笑いだった。
「呀ッ。――」
白いものが、夫の手から飛んで来て、あたしの鼻孔を塞いだ。――きつい香りだ。