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ちゅうとう
偸盗
線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁
」
「何がひどいものかね。死んでしまえば、犬に食われたって、痛くはなしさ。」
老婆は、杖の上でのび上がりながら、ぎょろり目を大きくして、あざわらうように、こう言った。
「死ななくったって、ひくひくしているよりは、いっそ一思いに、のど笛でも犬に食いつかれたほうが、ましかもしれないわね。どうせこれじゃ、生きていたって、長い事はありゃせずさ。」
「だって、人間が犬に食われるのを、黙って見てもいられないじゃないか。」
すると、猪熊のばばは、上くちびるをべろりとやって、ふてぶてしく空うそぶいた。
「そのくせ、人間が人間を殺すのは、お互いに平気で、見ているじゃないか。」
「そう言えば、そうさ。」
次郎は、ちょいと鬢をかいて、四たび白い齒を見せながら、微笑した。そうして、やさしく老婆の顔をながめながら、
「どこへ行くのだい、おばばは。」と問いかけた。
「真木島の十郎と、高市の多襄丸と、――ああ、そうだ。関山の平六へは、お前さんに、言づけを頼もうかね。」
こう言ううちに、猪熊のばばは、杖にすがって、もう二足三足歩いている。
「ああ、行ってもいい。」
次郎もようやく、病人の小屋をあとにして、老婆と肩を並べながら、ぶらぶら炎天の往来を歩きだした。