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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁

青空文庫

歩くごとに、京の町の荒廃は、いよいよ、まのあたりに開けて来る。家と家との間に、草いきれを立てている蓬原、そのところどころに続いている古築土、それから、昔のまま、わずかに残っている松や柳――どれを見ても、かすかに漂う死人のにおいと共に、滅びてゆくこの大きな町を、思わせないものはない。途中では、ただ一人、手に足駄をはいている、いざりのこじきに行きちがった。――

「だが、次郎さん、お気をつけよ。」

猪熊のばばは、ふと太郎の顔を思い浮かべたので、ひとり苦笑を浮かべながら、こう言った。

「娘の事じゃ、ずいぶんにいさんも、夢中になりかねないからね。」

が、これは、次郎の心に、思ったよりも大きな影響を与えたらしい。彼は、ひいでた眉の間を、にわかに曇らせながら、不快らしく目を伏せた。

「そりゃわたしも、気をつけている。」

「気をつけていてもさ。」

老婆は、いささか、相手の感情の、この急激な変化に驚きながら、例のごとくくちびるをなめなめ、つぶやいた。

「気をつけていてもだわね。」

「しかし、兄きの思わくは兄きの思わくで、わたしには、どうにもできないじゃないか。」

「そう言えば、実もふたもなくなるがさ。