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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁

青空文庫

が、どこへ行ったら、沙金に会えるという、当てもない。

「ままよ。羅生門へ行って、日の暮れるのでも待とう。」

彼のこの決心には、もちろん、いくぶん沙金に会えるという望みが、隠れている。沙金は、日ごろから、強盗にはいる夜には、好んで、男装束に身をやつした。その装束や打ち物は、みな羅生門の楼上に、皮子へ入れてしまってある。――彼は、心をきめて、小路を南へ、大またに歩きだした。

それから、三条を西へ折れて、耳敏川の向こう岸を、四条まで下ってゆく――ちょうど、その四条の大路へ出た時の事である。太郎は、一町を隔てて、この大路を北へ、立本寺の築土の下を、話しながら通りかかる、二人の男女の姿を見た。

朽ち葉色の水干とうす紫の衣とが、影を二つ重ねながら、はればれした笑い声をあとに残して、小路から小路へ通りすぎる。めまぐるしい燕の中に、男の黒鞘の太刀が、きらりと日に光ったかと思うと、二人はもう見えなくなった。

太郎は、額を曇らせながら、思わず道ばたに足をとめて、苦しそうにつぶやいた。

「どうせみんな畜生だ。」

六

ふけやすい夏の夜は、早くも亥の上刻に迫って来た。