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ぼうじんのげん

傍人の言

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《傍人の言(ぼうじんのげん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,728 字 · 8 頁

青空文庫

人は食べたものを悉く消化吸収するものではない。大部分をそのまま排出する。だから、素朴な議論を何度もくり返す必要が生じてくる。殊に、文学が生活からの逃避場でなくなり、生活意欲を多分に含む時代に於て、そしてそういう時代に、ファシズムが流行したり、ボルシェヴィズムが勢力を得たり、あるいは新たな精神的――心理的――領土が開拓されたりする時に当って、これをなお云えば、欲望と強権主義とが相剋し、また、肉体と精神とが乖離する時に当って、益々その必要が生じてくる。現に、文学者たちの会合で、各人が一番窮屈なポーズをとってる事実は、その必要を立証する以外の何物でもない。光や色のことではなく、ヴォリュームのことを考えてる時には、人はもっと暢達たる風貌になるものだ。

然し、余り素朴的にのんびりしていたのでは、結局凡俗に堕するのみだ、と私は考えるのである。

その凡俗がいいのだ、と彼は主張する。フローベルがボヴァリー夫人を書き、ツルゲネーフがバザロフを書き、イプセンがノラを書き、ブールジェーがロベール・グレルーを書いて、文学的ばかりでなく、社会的にも問題をひき起したのは、何も特殊な深遠な思想を披瀝したからではない。