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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《備前名弓伝(びぜんめいきゅうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 頁
ごくしぜんに充分引き絞ると、ふっと射て放った。びゅっ、電光のように飛んでいった矢は、四寸の的のまんまん中に当って戞! みごとに矢竹半ばまで射抜いてしまった。
的は吊ってあるものだし、檜板を牛の皮で包み、中に綿を縫い込んであるのだから、大抵の強弓で射ても射抜くなどということはないものだ。光政は思わず膝を打って、
「あっぱれ」と褒めた。「みごとだ、これへまいれ」三之丞は御前へ片手をついた。
「その弓は五人張りで、余にもいささか強いと思われるのに、いまみると無雑作に引いたようだがその方には強くはないのか」「恐れながら、わたくしにはいささか強過ぎるかと存じます」
「それをどうしてあのように楽々と引けたのか、なにか強弓を引く秘伝でもあるか」「……さればでござります」
これが出るといつも返辞をはぐらかされる、光政はもう慣れているからその手は喰わない。たたみかけて、
「ごまかしてはならぬ、強弓を引く秘伝があらば申せ、どうだ」「はっ、重ねての仰せゆえ申上げまする。およそ武術は戦場御馬前のお役に立つため修行を仕ります。弓にいたしましても泰平の稽古にはおのれの腕相応の道具を使えまするが、戦場に於て持ち馴れた弓が折れたとき、おのれの力に合う弓を捜している暇はございません、ありあう弓の強弱を問わず、即座に執って役に立てることができてこそ