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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

」

吉良は、取り合わずに、さっさと歩き出していた。美濃守の声が、追っかけた。

「お出迎えは、どこまで出るのですか。」

吉良を振り向かせるまでに、美濃守は、同じ問を根気よく、三、四度くり返した。

「お! 美濃守じゃったな。先日はまた、結構な扇箱を――お出迎えぐらいのことを御存じないとは、御冗談でしょう。」

「知っておれば訊きませぬ。知らぬから訊く。品川までかな?」

「品川にはおよびません。芝御霊屋の前あたりまで出られたら、よろしかろう。」

「しからば、」美濃守は、顔いっぱいに笑って、「品川までお出迎えいたしましょう。どうも自分は、吉良殿の逆を往くことが好きでな。」

ほんとうは、もちろん品川まで迎えに出なければならないのだった。

「御随意に。」

さっと赤くなった吉良は、すぐ蒼く、こまかくふるえて、美濃守に背中を見せた。

が、足をゆるめて、肩越しに、

「勅使院使のお日取り――御存じのうてはかないませぬぞ。」

美濃守は、首を傾げた。

「知りませんな。が、これだけのことは存じておる――勅使院使公家参向当日、お使い御老中、高家さしそえこれをつかわさる。御対顔につき、登城。摂家宮、門跡方、その他使者楽人、三職人御礼。