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げんろくじゅうさんねん
元禄十三年
林 不忘
線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁
たとえ誤ちでも、鯉口三寸ひろげれば、大変なことになるのだった。
が、勘忍ぶくろの緒が切れた。じぶんは、どうなってもよかった。乱心といわれても、切腹でも、そんなことは、かまっていられなかった。
吉良は、心中に、刀を抜いた。そして、恨み重なる美濃守へ斬りつけるところを、考えた。
松の廊下――ちょうど、隅の柱六本目のかげだった。
初太刀は、烏帽子の金具に当って、流れた。二の太刀は、伸びて肩先へ行った。
美濃は、逃げようとして、戸にぶつかって倒れた。起き上ろうとするところを、ここだ、と振り下ろしたが、その時、吉良は、うしろから、しっかり抱きとめられているのを知った。梶川与惣兵衛だった。大力の人で、すっかり羽掻い締めに、うごきが取れなかった――吉良は、身をゆすぶった。
「残念――。」
「いかがめされた、吉良殿!」
ゆらゆらと立っていた吉良だった。梶川与惣兵衛が、にこにこして、うしろから手を廻して支えていてくれた。
「抛り上げられて、眼が廻ります。どうも乱暴だ。」
「いくら天奏衆の御機嫌を取り結ぶのが饗応役とはいえ、御老体を――。」梶川は笑った。「歩けますかな?」
吉良も、仕方なしに、苦笑していた。