輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
線上閱讀岸田 国士《光は影を(ひかりはかげを)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 頁
警官も仲に入り、押問答の末、彼はやつと住所姓名だけを明かして、さつさとその場を引きあげた。が、さつきから交番の外に、紳士の連れらしい若い娘が、手持不沙汰そうに、時々、からだを左右にねじり、手に提げた買物包みを、長い袂といつしよに大きくゆすぶつているすがたが眼についていた。二つに編み分けたおさげの髪が、まだ初々しい肩先に軽く垂れ落ちて、薄い藍地の和服だけが、妙に大人つぽくみえた。と、交番を出る時、彼は、その娘が自分にお辞儀をしたように思い、こつちも、慌てて帽子に手をかけた。視線が合つたのは、ほんの瞬間であつた。彼は、むしろはつきりとその娘の顔をみた。薄暗い光の下で、それは、絵に描いたような美少女であつた。
それから二三日して、彼の留守中、味岡正造という名刺をもつた使いの者が、菓子折と、別に寸志と書いたノシ袋を置いて行つたことを知り、彼は、その「寸志」の方を、自分でわざわざ返しに行つたのである。はじめ玄関へ出て来たのは例の娘で、すぐに奥へ母親を呼びに行き、しばらく、受けとれ、受けとらぬの騒ぎを演じた末、ではもう一度主人に相談して、ということになり、この時、彼は、その娘のどことなく好もしい印象を心の奥深く刻みつけたのである。