輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《光り合ういのち(ひかりあういのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 頁

青空文庫

紙治が始まったので私たちは席に返った。私は父の語る浄瑠璃でなじみなのだが、舞台で鴈治郎のを見て美と恋の幻影に憑かれてしまった。私は廊下に出た時には酔ったようになっていた。私は鶴子がはばかりに立ったのを見て、後を追うた。そして彼女が鏡に向かって顔を直している時に、耳元に素早くささやいた。

「明日千光寺へいらっしゃらない?」

が私は返事を聞く勇気は持たなかった。そう言って置いて、彼女の顔も見ずに席へ返ってしまった。胸がドキドキして、落付いて見られなかった。

妹背山では鴈治郎のお三輪は無白であった。あのしゃがれ声を避けるためだったのであろう。あの年寄りがきれいになるものだとは驚いても、どうも不安で、美感がさまたげられた。

芝居がはねて家へ帰ってからも、寝床の中で私は姉と長く話した。姉が疲れて寝入っても私はまだ寝つかれなかった。芝居の後味と鶴子の幻影とがひとつにもつれ合って、なやまされた。

「彼女に聞えたのだろうか。聞えたにしても来るだろうか?」

彼女はわりに平気な顔していたようだった。別れしなに、チラと私を見た時の顔は飲み込んでいるのではあるまいか。少なくとも怒っていないことだけは確かだ……