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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
「心臓痲痺でもないそうで」
「絞殺の疑いもないのだそうだ」
「ではどうして逝去られたのでしょう?」
「解らないよ。俺には解らぬ」
「不思議なことでございますな」
「不思議と云えば不思議だが、しかし本来世の中には不思議ということはないのだがな。科学の光で照らしさえしたら、どんなことでも解る筈だ」
「ではどうして金一郎様は、お逝去りなされたのでございましょう?」
「さあそれは、今は解らぬ」
「でも只今先生には、科学の光で照らしさえしたら、何んでも解るとおっしゃいましたが……」
「うん、そうとも、そう云ったよ。……金一郎様のお死骸を、親しく見ることが出来たなら、俺の奉ずる蘭医学をもって、きっと死因を確かめて見せる。だが俺は見ていない。変事の起こったのは江戸のお屋敷で、俺はお噂を聞いたまでだ。千里眼なら知らぬこと、江戸の事件は高遠では解らぬ」
「これはごもっともでございますな」一学はテレて苦笑をした。
「だが」とにわかに北山は、四辺を憚る小声となったが、
「だが、俺には解ることがある」
「ははあ、何事でございますな?」
「この事件の目的だがな」
「金一郎様殺しの目的が?」
「一学! これはお家騒動だよ!」