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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

「そうは云ってもまんざらじゃねえぜ」もう一人の仲間が口を出した。「間口五間の舞台の端から向こうの端へ一足飛び、あの素晴らしい身の軽さは、どうしてどうして人間業じゃねえ」

「あいつにゃ俺らも喫驚りした。こう全然猿猴だったからな」

「そう云えば長さ三間もある恐ろしいような蟒を、細工物のように扱った、あの腕だって大したものさ」

「それに武術も出来ると見えて、棒を上手に使ったがあれだって常人にゃ出来やしねえ」

「だがな、眼があって耳があって鼻があって口があって、どうでもあたりめえの人間だあ、化物でねえから面白くねえ」

その時チョンチョンと拍子木の音が、幕の背後から聞こえて来た。やがてスーッと幕が引かれ、舞台が一杯に現われたが、見れば舞台の真ん中に大きな鉄の檻があり、その中に巨大な熊がいた。

「ウワーッ、荒熊だ荒熊だ!」「熊と相撲を取るんだな」「見遁がせねえぞ見遁がせねえぞ!」見物は一度に喝采した。

と異様な風采をした一人の老人が現われた。

「あれいけねえ、お爺つぁんだぜ」「いえ、あんな年寄りが、熊と相撲を取るのかね」「やめなよ爺つぁんあぶねえあぶねえ!」

などとまたもや見物は、大声をあげて喚き出した。