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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
妙な人は威厳をこめ、「あの男はよくない人間ですぞ。あの人間はある目的をもって天狗の宮の絶壁の下に木小屋を造って住んでいます。そうして城下へ下りて行っては色々の物を買って来ます。それを持って行商に来るのです。城下から山へ来るのではなく自分は木小屋に住んでいて絶えず部落の動静をうかがい乗ずべき隙を狙っているのです。……」
「へえ、さようでございますか。悪い奴でございますなあ」岩太郎はひどく驚いたが、「それにしてもどうしてあなた様はそれをご存知なのでございましょう?」
「ああそれは何んでもない。私は寸刻の隙さえ惜しんでこの山中を見廻っている者じゃ。で、私はある日の事、その木小屋を見付けたのじゃ。……おや、誰か戸口にいるな。私の話を盗み聞きしている」
なるほど、そう云った瞬間に山吹が戸口からはいって来た。さすがに頬を赤く染め呼吸をはげしく吐いているのは恋人多四郎を追っかけて行って追いつくことが出来なかったからであろう。
「ああ姉さん」
「おお山吹!」
二つの声が同時に呼んだ。山吹と呼んだのは岩太郎である。
岩太郎はツト進み出たが、
「山吹、俺は何んにも云わぬ。俺は偉い人をお連れした。