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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

「無論駄目駄目。大下手とも」

「いやいやまんざらそうでもあるまい。飯田の南条右近というは小野派一刀流では使い手だそうだ。その方の三男とあって見れば見下すことは出来ないではないか」

「論より証拠立ち合ったら解る」

「いやいや相手はご家老のご養子、無下に道場へ引っ張って行って打ち据えることもなりがたい」

「武芸には身分の高下はない」

「しかし相手はまだ子供だ、十二歳だというではないか。我々は立派な壮年でござる」「と云ってあの仁とて十八、九には、充分見えるではござらぬか」「たとえ幾歳に見えようと年はやはり年でござる」「よろしいそれでは注意して柔かくあしらってやりましょう」「さようさ、それならよろしかろう」

ある日、これらの若侍どもが、立川町に立っている中条流の道場でポンポン稽古をやっていた。主人の松崎清左衛門はきわめて温厚の人物であったがちょうど所用で留守のところから、代稽古の石渡三蔵が上段の間に控えていた。

通りかかったのが葉之助で、若党の倉平を供に連れ、ふと武者窓の前まで来ると小気味のよい竹刀の音がする。

「ちょっと待て倉平」

と声をかけて置いてひょいと窓から覗いていた。