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おとめのきとアブ・サルガ
処女の木とアブ・サルガ
野上 豊一郎
線上閱讀野上 豊一郎《処女の木とアブ・サルガ(おとめのきとアブ・サルガ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,098 字 · 20 頁
で、処女マリアが赤ん坊のキリストを抱いて、ヨセフに伴われ、イスラエルの地から王ヘロデの迫害を遁れてエジプトに避難した時、しばらくその木の下で暮していたと伝えられている。幹はさながら古材のようで、皮などはなく、つるつるしていて、なかばうつろになってるが、それがシカモアだとわかるのは、その幹から太い逞ましい枝が三本斜めに突出して、それも白っぽく枯れてるが、そのうち二本の端に不思議にも生き生きした小枝が伸びて青葉を付けている。その葉を見ると、エジプトの到る所で出逢うシカモアだということが、すぐ知れる。シカモア Sycamore を『聖書』には桑樹と訳してあるが、葉だけは日本の桑に似ているけれども桑ではない。いちじくの種類で、学名は Ficus Sycamorus となっている。(イギリスでシカモアといわれるのは種類がちがい、楓に似てるように見た。)
「処女の木」のシカモアは枯れ朽ちてるのに、尖に葉が茂ってるのがおかしいと思ったら、バッジ博士の The Nile(第十二版、一九一二年)には「処女の木」が一九〇六年七月十四日に老齢のため朽ち折れたのを惜んでいる辞句があり、一九一四年の Baedeker には一本の若枝が芽を吹いたので大事に柵を繞したという記事があるので、一二年と一四年の間に此のシカモアの木は復活した