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おとめのきとアブ・サルガ

処女の木とアブ・サルガ

野上 豊一郎

線上閱讀野上 豊一郎《処女の木とアブ・サルガ(おとめのきとアブ・サルガ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,098 字 · 20 頁

青空文庫

つまり、聖家族は紀元前四年の暮にベトレヘムを出て、翌三年の春早くエジプトに着き、その年のうちには再び国境を越えてイスラエルの国に戻っていたと見るべきであろう。

三

キリストを抱いたマリアのことを思うとヘロデを思い出し、ヘロデのことを思うと帝国建設前後のローマを思い出すのは、私だけの癖だろうか。実際、その頃の地中海沿岸は、ローマの世界だった。ケーサルの斃れた後、ローマの勢力はアントニウスとオクタヴィアヌスに二分されていたが、アクティウムの海戦(前三〇年)後は勢力が急に一方的となり、三年の後には後者は自ら第一人者と称して統帥権を掌握し、次第に帝政の基礎を固め、名をアウグストゥスと改め、キリストの生れた頃はすでに事実上ローマ皇帝であった。

一方、ヘロデは初めからローマに依存してユダヤを支配していた。ケーサルの暗殺者カシウスが地中海東部を支配していた時は彼に阿付していたが、カシウスが倒されて後はひたすらアントニウスの歓心を求め、アントニウスとオクタヴィアヌスの双方に取り入ってユダヤ王の名義を貰い出し、前三七年(三十七歳)にはエルサレムを手に入れ、以後三十四年間、都城を改修して其処に住んでいた。