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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

――その女の方で何処までも付いていて離れないんでしょう――私の方だって、ですから怒ろうたって怒られやしない。気の毒で可哀そうになったわ。――でも細君があると知れてから、随分捫んで苛めてやった。」

人を傍に置いていて、そう言って独りで忘れられない、楽しい追憶に耽っているようであった。私は静と聞いていて、馬鹿にされているような気がしたが、自分もその大学生のように想われて、そうして苛められるだけ、苛められて見たくなった。

その男は高等官になって、名古屋に行っていると言った。江馬と言って段々遠慮がなくなるにつれて、何につけ「江馬さん/\。」と言っていた。

それのみならず、大学生に馴染があるとか、あったとかいうのが此の女の誇で、後になっても屡く「角帽姿はまた好いんだもの。」と口に水の溜まるような調子で言い/\した。

すると、お宮は暫時して、フッと顔を此方に向けて、

「あなた、本当に奥様は無いの?」

「あゝ」

「本当に無いの?」

「本当に無いんだよ。」

「男というものは真個に可笑いよ。細君があれば、あると言って了ったら好さそうなものに此方で、『あなた、奥様があって?』