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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

……時々斯うして、お客様に、女中がお気の毒な目をお掛け申して。」

「全く貴女方にはお気の毒ですよ。……いや、何うも長居をして済みませんでした。」と、私はそんなことを言いながらも、

「あの女は、もういなくなるそうですねえ。……自分じゃ、つい此の間出たばかりだ、と言っていたが、そんなことはないでしょう。」と聞くと、

「えゝ居なくなるなんて、ことは、まだ聞きませんが、随分前からですよ。此度戻って来たのは、つい此間ですけれど、初めて出てから、もう余程になりますよ。」

と、言う。私は「彼女め! 何処まで※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)を吐くか。」と思って、ます/\心に描いた女の箔が褪めた思いがした。

私は、あの古い外套を形に置いて、桜木の入口を出たが、それでも、其れも着ていれば目に立たぬが、下には、あの、もう袖口も何処も切れた、剥げちょろけの古い米沢琉球の羽織に、着物は例の、焼けて焦茶色になった秩父銘仙の綿入れを着て、堅く腕組みをしながら玄関を下りた時の心持は、吾れながら、自分の見下げ果てた状態が、歴々と眼に映るようで、思い做しばかりではない、女中の「左様なら! どうぞお近い内に!」