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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

けれども女は、それには答えないで、

「……私また吉村が可哀そうになって了った。……昨日、手紙を読んで私真個に泣いたよ。」と、率直に、此の間と打って変って今晩は、染々と吉村を可哀そうな者に言う。

そう言うと、妙なもので、此度は吉村とお宮との仲が、いくらか小僧いように思われた。

「へッ! 此の間、彼様なに悪い人間のように言っていたものが、何うしてまた、そう遽かに可哀そうになった?」私は軽く冷かすように言った。

「……手紙の文句がまた甘いんだもの。そりゃ文章なんか実に甘いの。才子だなあ! 私感心して了った。斯う人に同情を起さすように、同情を起さすように書いてあるの。」と、独りで感心している。

「へーえ。そうかなあ。」と、私はあまり好い心持はしないで、気の無い返事をしながらも、腹では、フン、文章が甘いッて、何れほど甘いんであろう? 馬鹿にされたような気もして、

「お前なんか、何を言っているか分りゃしない。じゃ向の言うように、一緒になっていたら好いじゃないか。何も斯様な処にいないでも。」

そういうと女は、

「其様なことが出来るものか。」と、一口にけなして了う。

私は、これは、愈※(二の字点、1-2-22)聞いて見たいと思ったが、その上強いては聞かなかった。