輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《刺青・秘密(ひみつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,935 字 · 66 頁

青空文庫

と悲しい音色を響かせつつ、この街道へちらほらと聞えて来るのである。カラリコロリと云う下駄の音を伴わないのが、いつもと違っているけれど、その音色だけはたしかに疑う余地がない。初めのうちは「天ぷら………天ぷら………」と、「天ぷら」の部分ばかりが明瞭であったが、少しずつ近づいて来るのであろう、やがて「喰いたい」の部分の方も正しく聞き取れるようになった。しかし、地上には私と松の影より外に、新内語りらしい人影は何処にも見えない。月の光のとどく限りを、果から果までずっと眺め渡しても、私の外にこの街道を行く者は小犬一匹いないのである。事に依ったら、月の光があんまり明る過ぎるので、却って物が見えないのではないだろうか。―――私はそう思ったりした。

私がとうとう、その三味線を弾く人影を一二町先に認めたのは、あれからどのくらい過ぎた時分だったろう。其処へ辿り着くまでの長い間、私はどんなに月の光と波の音とに浸されただろう。「長い間」と云っただけでは、実際その長さの感じを云い現わす事は出来ない。人はよく夢の中で、二年も三年もの長い間の心持を味わう事がある。私のその時の感じはちょうどそれに似ていた。