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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁
こう云って探るように睨むように見た。
(あの歌のことだな)と浪之助は思った。
3
(ちちぶのこおり、おがわむら、へみさまにわのひのきのね)
この歌のことだなとすぐ思った。
しかし聞いたとそう云ったら、どんな目に逢わされるか知れたものではない、こう思ったので浪之助は、
「いや」と簡単に否定した。
「聞かない、よろしい。それは結構。……そこで貴殿に申し上げて置く、今後決して聞いてはならぬ。よしんば例え聞くことがあっても、決してその意味を解いてはならぬ。……よろしゅうござるか、浪之助殿」
「よろしゅうござる」と浪之助は云った、仕方がないから云ったのであって、その実彼はそういわれたため、かえってその歌に含まれている意味を、解いてやろうと決心したくらいであった。
こういう問答をしているうちにも、今は血刀を拭い終えて、陣十郎の横手に佇んで、爪楊枝を噛みながら、二人の問答を上の空のように、平然と聞き流している、女の姿を観察した。
三十がらみの年恰好で、櫛巻に髪を結んで居り、絞りの単衣に黒繻子の帯、塗りの駒下駄を穿いている。腰の辺りに得も云われない、毒々しい迄の色気があった。