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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

と、赤い一点の火が、花の蕾のような形を取って、建物の入り口から現われた。扉がその背後で閉ざされている。

「ね、叔父様はお仕事中よ、ですからはいっちゃアいけませんの」

焔の立っている蝋燭を持ち、その光に顔を輝かせ、佇んでいる娘がそういうように云った。それは他ならぬお三保であった。隣りの部屋に眠っていたところ、庭での騒ぎが起こったので、驚いて様子を見に来たものらしい。処女らしい美しさが驚きのために、純粋性を増して見えた。唇がポッとひらいている。眼が大きくひらいている。

「ああ、あなた猪之助さんね。……どうなさいました、匕首など持って。……」

「…………」

静が動を制したらしい。猪之助は呆然として突っ立っていた。

地下室は決して暗くはなかった。

明るい燈火に照らされて、その地下室の上にある部屋――隼二郎の部屋の舶来の、いろいろの外科の道具よりも、もっといろいろの外科の道具が、卓や棚に備えつけられてあった。そうしてその地下室の一所に、立派な柩が二つ置かれてあり、その中に二つの骸骨が研究材料のように置かれてあった。

そうしてその側の机によって、庭に騒ぎなどあろうとも知らず、隼二郎が手紙を読んでいた。