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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

木々を通して向こうに見える、二階建ての建物から華やかな笑いと、華やかな灯火とが洩れて来ていた。丸田屋の主人が客を招んで、夜宴をひらいているからである。

芙蓉の花がにわかに揺れた。お小夜の袖が煽ったからである。そのお小夜の左右の手が、珠太郎の背に廻っていた。

「それでは明後日の夜。……ね、珠太郎様」

「明後日の夜? ……ええ、きっと。……」

「まず名古屋まで通し駕籠で。……」

「通し駕籠で、……参りましょうとも」

「詳細い手筈は明日の晩に、やはりここで致しましょうよ」

「ええここで、明日の晩に。……」

珠太郎の頬にお小夜の髪が触れた。と、その時少し離れた、築山のあるほとりから、突然笑う声が聞こえて来、つづいて話す声が聞こえて来た。

「アッハッハッ、どうしたものだ。そんな殺生な真似はしない方がいい」

「これはこれはとんだ話で、あなた様こそ殺生な真似など、なさいません方がよろしいようで」

「何を馬鹿な、十二神め!」

「館林様こそよくございません」

その後の事を十二神貝十郎は、後日次のように人に話した。

お小夜と珠太郎の媾曳をだね、築山の蔭から見ていたのは、我輩ばかりではなかったのさ。