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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁
妾はそんなこと聞くだけでも厭だよ」
母親のお才は四十九歳であったが、勝れた美貌であるところから四十ぐらいにしか見えなかった。そう云ってから京一郎の顔を、当惑と不安と親の慈愛と、それらのもののこもった眼付きで、嘆願するように凝視した。(この子はお父様に大変似ている。思い立ったことなら、何んでもやり通す! ほんとにこの子は妾を棄てて家出をしてしまいはしないだろうか)お才は恐ろしくさえ思うのであった。
「ねえ京一郎や」とお才は続けた。「こんなこと妾が云い出しては、お前はバツを悪がるかもしれない。でも妾は云ってしまおう。誰かお前の背後にいて……そう、それも女がいて、お前に云わせるのではないかえ。そんなように妾には思われるがねえ……」
こう云われて京一郎は横を向いたが、顔がいくらか赧らんだようであった。でも彼が母の方へ向いて、おめもせずにこんなように云い出した時には、そういう赧らみはなくなっていた。
「ええお母様、そうなんですよ。女が背後についております。その人が私へそう云わせるのです。でもそればかりではありません、たといその人が背後にいなくとも、早晩私は同じようなことを、お母様に云い出したに相違ありません。